手紙の鳩
玉砕覚悟で書き下ろした手紙
だったんですが
僕が差し出すとその娘は手のひらにそれをのせたまま
困った顔をして
ハンカチをかぶせたんです
木綿の
彼女がハンカチをさっと取り払うと
鳩が一羽飛び立ちました
手紙は消えていました
彼女の唇が動きかけたので僕はあわてて言いました
いいんです
気休めなんて
いいえ
そうじゃなくて
彼女は言いました
あなたの手紙
白い鳩じゃなかったわ
僕ははっとして振り返りました
空を見たんです
自分の鳩を目で追ったんです
まだらで
ねずみ色に見える一羽の鳩が
曇り空にとけていきました
目を戻すと彼女はすでにいませんでした
2001.5.19
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お題「空の写真」に参加しましたが、
空に関わる詩はこれくらいでした。