詩を書いていたりします

時おり、詩のようなものを書いてきました。すみません。吐き出させてください。

言えない夢

まさかあなたが
僕の夢に出て来るとは
悲鳴を上げて飛び起きたりしない
むくりと体を起こしただけ
つぶやいたりもしない
昔の恋人だとか艶っぽい話ではない
他界した縁者たちでもない
競合他社の営業あなたは
僕が所属する会社の商売敵
そこの一員

僕らの戦いは
戦いと言うには大げさなような
切磋琢磨なんてかっこいいものではなく
足の引っ張り合いというほどかっこ悪くもない
と思う
ただ緊張が足りないのも良くないはずで
歳月は緩慢に過ぎて
その時その時はやはり大変で
やきもきして残業が続いて苛立って
家族に声を荒げたり
なのに振り返ると
なるほど部長のおっしゃる通りルーティー
僕もあなたも含めた大勢のやりとりは
緩慢と言わざるを得ない
お客様は商談の答えを出す気がないのだから
競わせる働かせるのが目的なのだから
そりゃ当然の権利でしょう
我慢なんて言葉を使うのはぜいたくでしょう
それを僕は誰かに教わったのでしょう
認めましょう
あなたも誰かの一人だったのです

その後あなたは配置換えになりましたね
あなたがいる会社は僕がいる会社の何倍も大きいのだし
ときおり噂も耳にしましたよ
お変わりないという噂
もともと
僕はあなたを打たれ強いタイプだと思ってましたからね

お久しぶりのあなたは
僕の夢の中でまったく別の仕事をしているのだ
スーツ姿しか見せたことのないあなたが
別の業種の作業着を着て
夢の中であなたは言う
転職ではない
兼職しているのだ

いくら緩慢でも
掛け持ちする時間まではないはずなんだが
睡眠中の夢に不審を抱いても仕方ないさ

分かっているのなら
なぜ覚えている睡眠中の夢
あなたがバトンタッチして去った後
緩慢だったはずがお客様も慌ただしくなり
これは嵐
不景気という嵐
しかもまだ続いている
もしかして始まったばかりか
そちらはどうですか
あなたの新しい仕事場は

あなたは転職とは言わなかった
夢の中とはいえ
おそらくあなたは現実でも言わない
もしかしたら言ってよいのかもしれないけれど
その実力があるのかもしれないけれど
あなたは言わない
僕は

人のことばかり言うのはやはりずるいな
ほめようがけなそうがやはりずるいな
こんな詩を
緩慢な仕事場で書いた

                                              2017.12.19