歌よありがとう
飲み会の席
早くお開きになればと思う
ばかやろう
お開きになればと思う
酔えたためしなどない
そんなものない
酔ってないよ
酔えてないよ
酔えるもんか馬鹿
あー吐きたい
鼻水も出る
歌でも歌おうか
ららら
やれ便利な世の中だ
こうして歌詞を検索できるなんて
ららら
歌は好きだ
歩くのも好きだ
ありがたいなぁ
やっと歩ける
歌いながら歩ける
歌よありがとう
明日のために靴を磨こう
そう歌えば
明日のために靴を磨けた
気がしてきた
ありがとう
歌よありがとう
今蹴つまずいたけど
歌よありがとう
何度でも歌うよ
意地になって歌うよ
歌よありがとう
2018.1.19
ヒートウェーブの「明日のために靴を磨こう」は名曲です。ぜひ聞いてほしい。
帰ったら家に鍵がかかってなかった。妻よ、ありがとう。ストーブもつけてくれてたなんて。
+
落書きの人へ
やがて去っていくという
そんな噂が聞こえてくる人
そんな人が書いた落書きを見つけ
今しばらくは気づいていないふり
でもそれがやけにかわいらしく見えるのは
かすかにうれしくなるのは
いつもと変わらぬその調子
噂など噂に過ぎなかったかのように
いつもと変わらぬその調子
原稿に直接ではなく
ポストイットを貼ってからその上に描く
という遠慮もいつも通り
もっと描いてくれよ
見せてくれよ
漫画とか描けばいいのに
やがて去っていくという
そんな噂が聞こえてくる人
引き止めたいのは山々だが
家庭の事情には敵わない
去っていけばいいなんて思ってもいない
去っていけばいい奴なんて他にいる
消えればいい奴なんて他に山ほど
それがよりによって
やがて去っていくという
そんな噂が聞こえてくる人
そんな人に僕は頼り
迷惑もかけ嫌な思いもさせた
言えた義理じゃない
からこんなところに書くのだが
戦友
と僕は思っている
ひそかに
勝手ながら
こんな落書きももうすぐ見られなくなるのかな
つまらないことだ
僕が戦友なんて大げさな言葉を贈る
めったにないことだぞ
その人は
小さくてか弱くていじられキャラか
誰がそんなことを
キャラだなんて浅くて嫌な表現だ
その人は立派だった
不器用だったかもしれないが
その人は立派だった
柔軟ではなかったかもしれないが
その人は立派だった
誰が何と言おうと
その人は立派だった
その人のおかげで僕は仕事ができた
その人のおかげで僕がこんな詩が書けた
本当に久しぶりに詩が書けた
ここ数日ちょっとスランプだった
寒空の夜にバス停で詩が書けた
鼻水を垂らしながら書き続けた
書かせてくれた
書きたいと思わせてくれた
そんな人やっぱり立派じゃないか
さて今度はその人の番かな
行った先でも落書きを描いてください
遠慮なくたくさん描いてください
ちゃんと気づいていますからね
2018.2.20
+
遅刻の詩
時計が止まっても
時間が止まったわけじゃないか
バスは定刻通りに通過したのであって
義務を果たしたのであって
バス停に定刻までに来なかったのは僕
義務を果たさなかったのは僕
いくら息を切らして走ったからって
ぎりぎりまで子らの世話をしていたからって
定刻に僕はバス停にいなかった
バスは僕のために止まらなかった
やれ遅刻の制裁は
事務処理である
パソコンで勤怠管理の画面を開いて
遅刻した事情を文字入力
上司も同僚も叱責しなければ
もちろん機械からも叱責されないが
ペナルティ
有休が半日減りました
一年で使っていい有休の総数から
そうですねこれが責任ということ
まあ有休を使いきった年なんてなかったけど
だから遅刻に当てればいい遅刻してもいい
じゃないからね
しかしうまくできてんな機械って
時間は約束だ
そうさ約束を守らなかった僕が悪い
でも少しは少しくらいは
大目に見ていただけないかと
許してくれないかと
待ってくれないかと
甘えなんですね
またバス停まで走ります
運転手さん乗せてくださぁい
2018.1.13
+
無理せず家長
パンを買ってきて
妻からのメール
食パン
ああ買ってくるとも
必ず買ってくるよ
食パン
命の糧のパン
そのために働いているのだから
馬鹿な妻
僕を夫に選んで
馬鹿な子ら
僕をパパなどと呼んで
妻よ僕はお前のために家事をするぞ
子らよ僕はお前たちにおもちゃを買ってやるぞ
子らの食べ残しは旨いな
飲み助の妻よ
今夜の夫は酒に付き合うぞ
先週妻に声を荒げた
その前の週は子の咳き込む声を聞き流した
そこまでして書きたいもの
描きたいもの
得たいもの
どれほどのもの
知るわけがない
子の咳き込みは親をなじる声
子のいびきは親への褒め言葉
息子がはねのけた布団を直す
何度でも直す
上の娘もこんなだったかな
もう思い出せない
幸せとは幼い子らのブロック遊び
ときどき取り合いっこするけど
今朝は絵みたいに並んで座っているじゃないか
子らは妻の手も取り合いっこ
子らは二人
妻の手は二本
左右に一本ずつつなげばいいのに
独り占めなんて息子よ
しつこいぞ僕みたいに
お姉ちゃんに少し譲りなさい
エスカレーターの下から怒る僕は
やきもちを焼いているんじゃない
三人もつれて転んだりしないか
心配しているんだぞ
本当だぞ
馬鹿な妻
僕を夫に選んで
馬鹿な子ら
僕をパパなどと呼んで
社長はもちろん
部長でも係長でもない僕だけど
今気がついた
お前たちが僕を家長にしてくれたのか
無理してるって
そうかもね
ほかならぬお前たちのためだもの
ほかのどうでもいい奴らのために
無理などするものかよ
いや
まだ無理とか言わないぞこの程度
こんな詩を書くひまがあるんだ
無理でもなんでもないぜ
2017.11.7
+
その昔、大江千里さんが「僕を選んだことを変えさせない」と歌っていた。当時はちょっと自惚れてないか、などと底意地の悪い解釈をしていたのだが。なぜだろう。サビの上手さか、クサすくせに、このフレーズを覚えていた。忘れられなかった。
大江さんの術中に、まんまとハマった、ってことか。
今回も、予約投稿です。
コレクター
人形たち
物言わぬ人形たち
カラフルで
オプションも豊富
ヴァリエーションも何通りあるだろう
物言わぬ者たちが
こんなにも多弁に見える
こちらの勝手な期待なのに
この愚者の妄想なのに
もっと見せてくれ
もっと聞かせてくれ
お前たちの仲間をもっと連れてくるから
一人にはしないから
馬鹿だなぁ
もうたくさんじゃないか
馬鹿だなぁ
しょせん無機物じゃないか
馬鹿だなぁ
きりがないだろう
馬鹿だなぁ
本当は分かっているんだろう
やがて時が来る
お前たちは不意に黙る
同じ者似た者が並ぶ
ダブる
個性がなくなる
そうなるとお前たちでももう自分を語れない
「お前の代わりなんていくらでも」
そんなこと言ってないよ
一度も言ってないよ
そんなセリフ僕が一番恐れ嫌っているのに
お前たちを並べて眺めて悦に入る
そんなひとときもたしかにあった
でももうお別れ
これが卒業なのか
それともまた別の誰かを代わりにするのか
次は
もっと良い持ち主に出会うといい
その人を僕の代わりにするといい
こんな頭でっかちの中年でなく
もっと無垢な子供たちに
引き取られるといい
2018.1.13
もしも
もしもこの観覧車が
止まったら僕はつかまれるのか
子ども二人も抱えて
もしもこのクレーン車が
倒れきたら僕は避けられるのか
感情妄想雑念だらけの頭で
もしもこの車が
もしもこの会社が
もしもこの町が国が
もしも妻と子らが
もしもあるいは
まさか
まさか本当に起こったりしないだろうなと
怖すぎて書けないもしも
*
もしもこのスマホが
手術後の母の無事を確認するべく
母からの着信を待つこのスマホが
他界したと聞かされた長兄からの着信にふるえたら
僕は何か言えるのか
聞きたいことがありすぎる
まずは母のことから
兄ちゃんの死後の手続き
兄ちゃんが遺したものの片付け
全て母さんがしたんだよ
何回も横浜まで遠征してしたんだよ
兄ちゃんは知ってたか
*
子らよ
迷子のお前たちと再会できたはいいが
僕はこの父は震えている
ほかのことをお前たちと話しながら
この心は震えている
ほんの数分前のまだ再会できていなかった時間
短かったはずなのに長かったあの時間
そのまとわりつくような
この背骨に粘りつくような
もしも
2018.1.7
+
予約投稿です。
ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。
ありがたいのですが、ごめんなさい。
これから添える写真が気分を害するやもしれません。
蜘蛛の巣の写真です。
なぜそんなものを撮るのか?
なぜそんなものを載せるのか?
普通はそう思われますよね。
自分でもよく分からないのですが、
そのくせ何だか載せたいと気持ちがわいて、仕方がないのです。
どうか遠慮なく、この辺りで他のページに移られてください。
まったく、何をやっているのやら。
何に囚われているのやら。
心にヤスリをかけられたように、落ち着かなかったもので、つい。
オーバーフロー
オーバーフロー
オーバーフローなんです
あなた方が関心を持たないもの
あなた方がやがて捨てるであろうもの
事なかれ主義者のあなた方が
右から左にと横流しするだけのもの
それらをつくるために
それらが完成させるために
オーバーフローなんです僕は
深夜残業して
バスも乗れなくて
タクシーの清算は事前にとか面倒を言われて
面倒くさくて歩いて歩いて歩いて
子らが寝ついたところに帰りついて
寝る直前で胃に悪いと知りながら
頬ばってかきこんで
早く寝ればいいのに
むやみにロウソクを灯して見つめ
薄暗いテーブルの上でロウソクの火を見つめ
最近金払いが悪くないですかねあなた方
面倒をかける分金払いがいい
それが取り柄だった
それが約束だった
はずなのに
こちらの体制も似たようなものか
助け合うのが理想ですが
助け合えたためしが何度あったろう
思い出せもしない
かく言う僕も力不足
直接の手伝い援護射撃
そんなこと夢のまた夢
ゴミ捨てをするか
差し入れにお菓子を配るか
関の山
それすらしない奴も珍しくなくてねぇ
結局
自分が楽したいというのが本音でしょう
自分だけが
自分さえ良ければ
自分だけ
形だけ群れてはいるものの
オーバーフロー
そうオーバー
はじめからオーバーしているんです
時間内に終わるわけがない
予算など達成するわけがない
団結するわけがない
感謝し合えるわけがない
わけがない
本当は気づいているんだろう
知ってて聞くなよ
心配しているつもりなのか
誰の
何の
神経を逆なでしている
とは言い過ぎか
逆恨みだろうか
オーバーな表現とでも言うのか
これでも言い足りないくらいだ
2018.3.24
+
この詩を書いてから、一年以上か。
さて状況は随分と変わってくれました。
改善かとは聞かないでください。また苛立ってしまいます。
すみません、情けない話です。
考えてもみれば、この詩を掲載しておくのも今のうちか。これから状況はどんどん変わり、この詩がそぐわなくなる可能性の方が高い。腹立たしいが、断然高い。
詩に登場したロウソクの一つ。
もう一つは、このブログのメイン画像にしました。
メイン画像のロウソクは、娘がワークショップで作ったものだったのに。愚かな父が無駄遣いしてしまいました。
今はもうありません。